国内初、品質検査で「音」を聞き分けるAI異音検査システムをスカイディスクとトヨタ自動車九州が共同開発
国内初、品質検査で「音」を聞き分けるAI異音検査システムをスカイディスクとトヨタ自動車九州が共同開発
熟練工の高技能を標準化し、生産ラインで稼働開始
株式会社スカイディスク(本社:福岡県福岡市、代表取締役社長兼CEO:内村 安里、以下「スカイディスク」)とトヨタ自動車九州株式会社(本社:福岡県宮若市、代表取締役社長:永田 理、以下「トヨタ九州」)は、レクサスを生産するトヨタ九州宮田工場の検査ラインにAIを活用した異音検査システムを2021年8月から導入し、本稼働を開始しました。
異音検査のAI活用は、設備保全分野で多数の事例がありますが、品質検査分野での実装は国内初(※1)となります。今後は、今回の実績を基に宮田工場内の別の検査ラインへの導入を検討してまいります。
AIを活用した異音検査システムについて
スカイディスクが開発した音に特化したAI分析ソリューションは、検査走行中の車内の音データを人の聴覚特性に基づいて分類し、抽出された約1万個以上の特徴量から異音を判定するAIモデルを作成します。
今回、スカイディスクとトヨタ九州が、AI分析ソリューションをレクサス製造ラインに合わせてカスタマイズし、AI異音検査システムを共同開発しました。
具体的な事例内容
【検査対象】レクサス完成車
【適応工程】車内異音検査(最終検査の項目のひとつ)
レクサス完成車の検査項目のひとつに、走行中に車内で異音がしないか最終確認する「車内異音検査」があります。この車内異音の検査工程に、AI異音検査システムを導入しました。
・開発の背景
トヨタ九州宮田工場は、世界随一のレクサス製造拠点として各工程に熟練工を配し、世界トップレベルの品質を守り続けています(※2)。
出荷前の検査項目である異音検査は、検査員の聴覚で「音」を聞き分ける官能検査であるため、個人の聴力に影響を受けやすい工程となっていました。将来予想される検査員の高齢化による聴力の衰えや個人差に対応するため、2018年1月からAI化の検討を開始しました。
・システム概要と導入ステップ
AI分析ソリューションでは対象の音に合わせたマイク選定が重要です。今回は新たに車内異音用に集音マイクを選定し、異音検査における音データをデータベース化しました。データに基づいた安定した検査品質の実現のため、熟練検査員の経験や判断をAIに学習させて、検査精度を高めました。
2018年4月から実際の工程でAI異音検査システムの検証を開始し、実運用に向けて繰り返し精度向上に取り組むとともに、システム構築を含めた最終調整を実施しました。検査精度が安定的に確保できたことから、2021年8月に本稼働を開始しました。
・効果
AI異音検査システムの開発・導入により、検査員の聴覚に依存していた検査工程の属人化解消・品質安定化を実現しました。また、検査作業者の耳の負担や凹凸のある検査路面を運転する際の身体的負担も低減することができました。高い検査品質が求められる最終検査工程かつ、特に人の身体能力に依存し標準化が困難だった異音検査で導入できた実績を基に、 今後は他の検査工程への展開も検討してまいります。
トヨタ九州 土井技術員からのコメント
「走行ロードノイズの中で発生する微かな異音をAIで判定する」とても難しく大きなチャレンジを、福岡の地場企業であるスカイディスク様とともに現場と一丸となって取り組ませていただきました。
お客様(人)と同様の認識レベルで判定する官能検査の集音・定量値化に新たな標準が作れたことは、レクサスブランドの品質向上の可能性が広がったと感じています。
製造業の官能検査(異音検査)における課題解決
官能検査による検査工程は、熟練検査員の経験により不良原因まで推測されるなど、品質管理の向上に寄与してきた歴史があります。検査員が音を聞いて良品・不良品を判断する異音検査もそのひとつです。一方で、異音検査では、人の聴覚で聞き分けるために定量的な判定基準を設けることが難しく、さらに検査対象の「音データ」が蓄積されていないために、検査員同士での共有や継承が非常に困難となります。
これらの課題をAI分析ソリューションで解決するには、まずは適切なデータ収集(集音)から着手する必要があります。ものづくり現場の様々な制約条件を考慮した上で、AI開発に最適なデータ収集、ハードウェア・設備を含めたワークフロー設計・開発まで取り組むことで、AI実装による課題解決が実現しました。スカイディスクは個別のプロジェクトで得た知見・ノウハウを新規プロダクトとして世の中に還元していくことで、今後も製造業の発展に貢献してまいります。
※1 2021年10月までに公開された実証実験(PoC)を除く、AI実装の事例を対象にしています。スカイディスク調べ。
※2 宮田工場は、米国市場調査会社J.D.パワーによる品質調査(自動車初期品質調査IQSブランドアワード)にて最高位プラチナ賞を過去5回(世界最多タイ)獲得。世界屈指の自動車生産現場として知られています。
<2021年11月4日配信 共同リリースより>
[ 関連リンク ]
AIカスタマイズソリューション
https://skydisc.jp/solution/
国内初、品質検査で「音」を聞き分けるAI異音検査システムをスカイディスクとトヨタ自動車九州が共同開発 熟練工の高技能を標準化し、生産ラインで稼働開始
https://skydisc.jp/information/3319/
人の聴覚特性を模したAI分析モジュール「SkySound」の提供開始
https://skydisc.jp/information/1376/
※SkySound(スカイサウンド)はプレスリリース時の仮称です