カルビー株式会社との生産計画DX対談「生産計画DXを成功に導く組織・人」

左から、カルビー株式会社 溝口さま、スカイディスク 内村

DXで成果を出すためには人材を育成するだけでなく、組織としてDXにコミットし、継続して投資を行うことが重要です。一朝一夕には成果が顕在化しづらいDX投資を行う上で、現場がDXを主導するという意識と、その努力を支えていく組織としてのコミットメントは必須です。
カルビー株式会社(以下「カルビー」)は2019年からDX推進委員会を社内で立上げ、組織としてDXにコミットし成果を創出している会社です。今回はカルビーのDXを推進する、カルビージャパンリージョン 西日本事業本部 ゼネラルマネージャーの溝口氏(以下敬称略)に、スカイディスク代表取締役CEO 内村がDXの取り組みについてお伺いしました。

カルビー株式会社 カルビージャパンリージョン 西日本事業本部 ゼネラルマネジャー 溝口 誠 氏

カルビーのDXへの取り組み

溝口:2019年に発表した中期経営計画の中で、今後の経営基盤を強化する施策の1つとしてDX推進による生産性向上に注力することを決めました。

そのときに初めて、「DX」という言葉を知りました。『DXのXはトランスフォーメーションと読むんだー』、からのスタートでした。そこからプロジェクトメンバーがITに関する様々な知識をシャワーのように浴び、理解を深めていきました。

カルビーでもようやく「DX」という言葉が浸透し始めましたが、カルビーにはポテトデラックスという商品もあるので、当初はDXをデラックスと読む方が、多かったですね(笑)

内村:そうなんですね(笑) DXを推進されるメンバーは、どういった方々だったんですか。

溝口:カルビーのバリューチェーンの各プロセス、つまり生産、営業、物流、マーケティング、開発、原材料調達といった各部門が参加してDX推進委員会を組成しました。私も広島の新工場立ち上げのプロジェクトに携わることもあり、DX推進委員会の生産部門の担当として活動をしてきました。

委員会では、カルビーでDXをやるなら、どういったことができるのかを想像するところから始めました。デジタルを介して新たなことができないか、他の企業や海外でも実施されていることを、少しずつつまみ食いしながら、カルビーに一番向いているものはないかを数年にわたり議論してきました。その結果、ある程度成果も出始めているかなと思っています。

内村:DXの取り組みは湖南工場で多く実施されているようですね。湖南工場の位置付けについても教えていただけますか。

溝口:湖南工場は西日本に6つある工場の中で、最も生産力が高く設備が比較的新しい工場であることから、他工場のモデルとなる取り組みを行い、ここで成功した事例を全国に展開したり、新工場のモデルとなる活動を行っています。

DXへの取り組みの狙いは、最終的にはお客様への価値創造です。その一歩手前の活動として、社内で身近なところから始めました。生産部門としては、まず工場の中でより働きやすさを実現する、例えば、自動化により人の負担を軽減し、「人に優しい工場になる」ことを実現する取り組みを実施しています。

生産計画DXに着手した理由

内村:今回、生産計画DXに着手された理由についてもお伺いできますか。

溝口:私が30代の頃の上長に、『工場のマネジメントをする上で一番何が大切ですか』と質問したら、『生産計画だよ』、と答えていただいたことがあります。

その時はまだ腹落ちしなかったのですが、自分が同じ立場になったときに、(生産計画は)少しのことでも結果が大きく左右することを体験し、生産計画の重要性を実感しました。また私が週間計画を担っていた頃、金額面でもかなり大きな効果を生んだことがありました。このように生産活動に大きな影響を与える作業で人により結果が変わることに疑問を感じました。DX推進の中でこの作業を標準化する、つまり生産計画DXに着手することに決めました。

内村:生産計画DXで成功している事例を教えていただけますか。

溝口:それは、まさしく最適ワークスの導入と運用ですね。実際に製造ラインで運用の最後の2ヶ月ほどは、現場のメンバーが中心に活動し、ただ生産計画作業を自動化するだけではなく、カルビー社内の他のシステムとの連携をワンクリックで自動化することを、現場主体で進めてもらいました。

最適ワークスの導入により、ベテランでも2時間、不慣れな方だと1日かかって作成していた生産計画立案業務が、2分で実施できるようになりました。現場が自分ごととして捉え、効率化を実現し、自身の成長を実感している、まさしくDX人材育成の成功事例であると思います。

内村:最適ワークスを例として出していただいて嬉しいです。他の企業の話をお伺いする際に、DXは非常に重要なんだけど、その評価をどうするかが問題という話をよく聞きます。どうしても実際の製造現場の方が評価の主体になるので、現場から離れたDXだと運用が難しいという話を伺うこともあります。今回のような取り組みであれば、そういった課題も避けられそうですね。

溝口:そうですね。カルビーの場合、現場で価値が理解されているので、スムーズに運用につなげられていますね。

内村:最適ワークスは、生産計画を立てる人の工数を削減します、というだけのサービスではないと思っています。生産計画にはオーダー、つまり需要情報があって、また設備の稼働情報や人の勤務情報があって、更には在庫であるとかその後の配送、物流にまでつながってきます。

そういった製造業の基幹に関わる各データをどう経営に活かせる形で提供していくのかというところまで考えて、初めて生産計画DXと呼べるだろうというのは我々も意識している点です。最適ワークスで取り扱う、生産計画に関連するデータを活用していくサービスやソリューションも提案していきたいと思っています。

生産計画DXは現場が主導する

溝口:DXを成功させるためにはまず、まず『DXをうまく進めると、仕事が楽になる』といったことを自分たち自身が実践し体験してみることが大事だと思います。つまり自分も改善の取り組みに携わり動いてみて、DXをやることによって今まで諦めていたことができるようになる、自分たちでも改善していけるということを実感してもらうことです。現在の取り組みから『自分たちでもできるんだ』という風に思ってくれる人材が増えたことが一番の成果です。

最初はDXを行う上でIT人材が少ないとの認識の下、その人材育成に主眼を置いていました。DX活動で、カルビーの価値を引き上げるためには、カルビーの特徴を熟知している方が担当することが非常に重要だということに気付きました。IT企業の方はIT技術を良くご存じですが、カルビー固有の価値創造を発想することは難しいため、カルビーの価値を一番知っている我々従業員が、DXについて理解を深め成長することが一番の成功への近道でした。

内村:IT人材を外から入れていく、というよりは自分たちでITの知識を身につけていくというスタンスが、一番DXを進める上で必要かもしれないですね。

我々も最適ワークスの開発を始めたときに、製造業の現状を色々と調べました。スカイディスクのようにAIを扱う企業でも、エンジニアの採用はかなり難しい状況です。大会社ならまだしも、中小企業までエンジニア人材が行き渡ることは基本的にないだろうと思っています。そのため、最適ワークスをシステムエンジニアを介せず現場の担当の方に使っていただけるものにすることは非常に注力した点です。カルビーさんのように現場の方に使っていただき効果を感じていただけた、というのは非常に我々としてもうれしいです。

責任者の思いと現場の想いが重なり、初めてDXが加速する

内村:カルビーのDXが順調に進んでいる一番大きなポイントって、カルビーとして中期経営計画の中で明確にDXを掲げられて、それが溝口さんだけではなく先ほどお話ししていただいた現場のメンバーであるとか、社内の方々に浸透されていることかな、と今お話を伺いながら感じました。

溝口:やっぱりDXで投資をしてそのままストレートに金額効果が出る、ということはそうないと思うんですよね。やはり事業そのものの改革とDXがつながることで初めて効果が出るものだと思うので、まずは我々管理者が事業の変革を発想できるかどうかが要だと思います。先ほどお話した生産計画DXにたどり着くまで、着想から4年という時間を要しました。変革するという強い意思を持ち、DXによる効果を企業の長が理解して先行投資できるかどうかが重要なポイントだと考えています。

また、現場についてですが、カルビーでは小集団での改善活動を行っています。第一線の現場で働く方々が能動的に現場改善を考える中で、デジタルを活用することでこれまで諦めていたことでも自分たちで解決できることを実感してもらうことで人が育つ、というのは先ほどご紹介した通りです。

このような活動を促す現場上長の理解も重要です。そして、仕事の内容を熟知し、その価値や目的、問題点はどこにあるかを理解している責任者が一緒に取り組むことでDXは進みます。課題を知る方が少しでもITの知識を持つと、DXでやれることがこんなにある、ということが沢山浮かんでくるはずです。

内村:我々も製造業の皆さまとお話をさせていただく際に、「スモールスタート」と「オーナーシップ」の重要性を強く感じます。スモールスタートとは、まずは小さなところからDXに取り組んでみて、その成果を感じる成功体験を得ることと言えます。また、オーナーシップとは、DXの取り組みを外部の専門家に丸投げするのではなく、自らの課題意識として動かしていくことだと考えています。

我々の丁度いい立ち位置は、外部の専門家としてサービス、知見やノウハウを提供し、DXが進み成果創出につながるようお手伝いすることかな、と。社内の人の主導なくしてDXを実現することはできないな、と感じるところでもあります。

溝口:そうですね。今、DXに関して外部には新しい技術やソリューションがあふれている状況です。ただし、外部の専門家には「カルビーにこの技術を持ち込んで何が変えられますか」、という質問に完璧に答えられる人はいないと思っています。我々カルビーの人間にはその技術を理解すると、何が変えられるかを想像することができます。

活動の決裁権を持つ人と、現場の人が同じ方向を向き、あるべき未来について想像を広げていく中で、DXがインストールされることが重要です。決裁者と現場、そしてDXを実現するサービスやツールなどのデジタル技術、この3つが揃うことで、DXが推進されるのだと考えます。

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カルビー株式会社 会社概要

Webサイト
代表者:代表取締役社長 兼 CEO 江原 信
設立:1949年4月30日
事業内容:菓子・食品の製造・販売
従業員数: (連)4,398名 (単)1,883名(2022年3月31日現在)

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