官能検査・官能評価、工業製品の検査の基本や検査方法3選

官能検査は、工業製品や食品を人間の五感(視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚)などの五感を用いて判定する検査方法です。この記事では、官能検査の感覚のバラツキを無くすための検査方法や評価方法を解説します。

官能検査とは何か?

官能検査とは、検査の基本とも例えられる身近な検査方法です。人間の五感を利用して製品の品質を判定する検査であり、工業製品などの検査で用いられています。

主な官能検査方法の種類

官能検査を行う際には、調査する製品の性質などを考慮したうえで、検査方法の種類を選択しなければなりません。代表的な方法は、二点識別法、三点識別法、一対比較試験法です。それぞれの方法について解説します。

1.二点識別法

二点識別法は、客観的に差のある2種の試料を用意し、「硬さ」「柔軟さ」など、指定する特性について該当する試料を判断させる検査方法です。試料間の差異の確認、パネリストが試料間の差異を識別できるか判断するために用いられています。

2.三点識別法

三点識別法も2種の試料を比較する検査方法です。ただし、三点識別法の場合は、比較させる試料が3種となり、2種は同じ試料、1つは性質の異なる試料を用意し、どの試料が他の2種と異なる試料であるかを選択します。試料間の差異の確認、パネリストの識別能力を測るために使用されるのは二点識別法と同様です。 二点識別法よりも比較対象となる試料が増えることで、より集中して異なる試料を選択させることが可能となり、精度の高い調査を行うことができます。

3.一対比較試験法

複数の試料を比較する際に、それらの試料を対にして取り上げ、一対一比較を繰り返すことにより、それぞれの試料の順位付けを行う検査方法です。 回答者は試料について、一対一で比較すればよいため、1回ごとの評価の負担がかからず、評価の矛盾が起きにくいという特徴があります。例えば、類似度の高い試料同士でも、その違いを詳細に評価、分析できるため、製品開発時のコンセプト案などの選定にも利用することが可能です。

官能検査を行う際の留意点

官能検査は、人間の感覚に頼って検査を行うものであるため、留意すべき点があります。特に、個人ごとに評価基準に対する考え方・感覚が異なることから、体調・先入観などが評価結果に影響する場合が少なくありません。そのため、実際に役立てることのできる信頼性の高いデータを得るためには温度や湿度、照明・騒音などの環境を検査する試料に適した環境に整えることが必要です。

また、工業製品などを製造している場合には、限度見本を用意する必要があります。限度見本は、合格品の限度見本と不合格品の限度見本があり、官能検査などには必須です。実際に製造した製品と見本とを比較しつつ、合否の判断に迷った際の判断基準となるためです。

 

さらに、官能検査を行ううえで、目的を明確にすることも大切だといえるでしょう。評価する目的が明確でなければ、それに適した官能検査の手法を選択できず、官能検査を実施したとしても満足できる結果は得られません。 こうした留意点を把握していなければ、間違った結論が出されることもあるため、注意が必要です。

官能検査の評価方法(官能評価)とは

官能検査の評価方法として、評価シートを使用するケースが代表的です。評価シートはパネリストに試料についての情報を与えるものです。そのため、評価シートは官能評価において重要なポイントであり、評価シートの内容次第では、同様の内容の検査を実施しても、結果が大きく異なることもあります。

精度の高い評価シートを作成するためには、シートに記載する説明分や用語に十分な情報が含まれている必要があり、先入観を与えないようにすることも重要です。また、評価項目・評価用語の選定が必要となる他、試料そのものや、検査に適した環境の分析、検討も必要となります。
精度の高い評価シートを作成する過程を経ることで、適切な官能検査の方法の選定、適切なパネリストの選定が可能です。評価シートは、官能検査の評価を左右するものであるため、精度の高いデータを得るためにも作成時は丁寧な作成を心掛けましょう。

 

官能評価を行う人の種類

官能評価を行う人の種類は、分析型、嗜好型の2種類に分けられます。どのような違いがあるのかについて詳しく見ていきましょう。

1.分析型官能評価

試料の特性、試料の差を評価するための官能検査が分析型官能評価です。そのため、パネリストに高い識別能力が要求されるので、事前にテストや専門的な教育が必要な場合もあります。工程管理や品質管理などを評価し、人数は1~10人程度の少人数になるのが特徴です。 つまり、分析型官能評価では、少人数の識別能力の高いパネリストが客観的評価を行っています。

2.嗜好型官能評価

試料に対してパネルの好みの調査などを行うのが、嗜好型官能評価です。目的に合わせて、試料の対象消費者のパネルの選定が必要で、パネルの年齢、性別などの属性が評価結果に影響するかも考慮しなければいけません。 影響が出ない場合は、身近な集団(社員や学生)を利用することもできます。分析型とは異なり、識別能力などは考慮されず、パネルの数が多いほど、市場の状況を把握しやすくなります。 嗜好型では、識別能力などが要求されず、多人数の消費者が主観的な評価を行っています。

官能検査の評価項目

評価項目を選定する際に欠かせない点は、試料の特性を把握したうえで、適した評価項目を選定することです。例えば、それぞれの試料で形・色・大きさ、使用方法などが大きく異なってくるため、それに適した評価項目を設ける必要があります。製造業などであれば、メッキや塗装の光沢、表面の粗さなど品質特性を評価する項目が必要です。 また、分析型の官能評価、嗜好型の官能評価どちらを選択するかでも評価項目が違ってきます。分析型では、客観的な評価が行える項目を設定し、嗜好型の場合には好き嫌いなど主観的な意見が投影される項目を用いなければなりません。

官能検査における評価項目は、官能検査の方法や人の種類、試料の特性により、大きく異なります。それぞれの試料に適した項目を検討しながら選定を行いましょう。

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